所謂転職エントリ2022–2024。CEO→PdM→コンサル→???

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元SaaS事業の提供会社の起業家、CEOであり、ソフトウェアエンジニアでもあった私が、PdMに転職し、さらに現職に転職した経緯、そしてその後について自分の中の整理を文字に起こしてみました。

以前Mediumに仕事募集投稿をしたことがありました。その後、様々な企業様の話を聞かせていただいて、現職に入社しました。

↓2022年10月に投稿した記事。当時はPdMをしていました。

2024年の現職ってどこ…?は後述するとして、当時お話を伺った企業について少し書いてみようと思います。

2022年10月〜2023年1月に40社の話を伺う

約40社の面談を受けました。

Mediumの記事を見た方がFacebookから、エージェント様紹介、ダイレクトスカウト(ビズリーチ・Wantedlyなど)などの経路でお声がけを頂きました。

紹介を頂いた会社数でいえば100を優に超えると思うのですが、その中から厳選して40社面談。40社もまだまだ多いですが。

40社の企業カテゴリとしては概ね次の3種類です。

  • 業界特化型SaaS(Vertical SaaS)
  • 上場企業の新規事業特化子会社(業界は各社限定されるも様々)
  • SaaSに閉じないIT企業(広告、仮想通貨、AI、Web3、オフショア開発、メディア、etc…広すぎますが)

2022年転職検討当時は「初めての転職活動」だったので幅広に色々見させて頂く、聞かせて頂く機会を頂戴しました。2014年から自社でずっとエンジニア向けのSaaS提供を行ってきた、その前はずっとスマホ事業だった。Repro社は創業メンバーの友人からの誘いで入ったため、転職活動というのはしておらず、といった背景があり、しっかり多くお話を伺う事にしました。

本当に様々な企業のお話を伺わせて頂きましたが、思ったこととして次の3つがありました。

  • 特定顧客(JTC)への依存度の高いスタートアップ企業の多さ
  • ITだけで完結しない、特定ドメインの知識やリソースなどが必要とされるスタートアップ環境
  • 大きくなってからや上場してからも会社外(内からも)から見えない課題を持つ企業の多さ

特定顧客(JTC)への依存度の高いスタートアップ企業の多さ

スタートアップ企業が生きていくためには売り上げが必要です。エクイティファイナンスだけで生きていける時代ではありません。

中小企業から少額(たとえば1社当たり月額5万円など)を頂いたとしても、100社でMRR500万円。従業員5人も養えません。1000社いればオフィス賃料と従業員への給与、マーケなどの費用を賄えるかもしれませんが、潤沢とまでは言えないでしょう。この100社を集める困難さ、1000社まで広げられる市場があるかどうかの難しさはSider社を経営している際に強く感じました。

そのため、1社から毎月1000万円など入ることは会社を存続させる上で非常に重要なことであり、そのような顧客企業が2–3社いればなお良いと思います。

そういった形で売り上げを上げている、日本の伝統的な大企業から収益を得ているスタートアップ企業が多いなと思いました。これは素晴らしい事です。

一方で、「これはスタートアップ企業である必要性はあるのだろうか?伝統的な企業の中でやることは出来ないのだろうか?」とも思いました。

困難さは分かっているつもりではありましたが、実際に伝統的な企業の中でチャレンジしたことはないので、出来るのでは?という気持ちもありました。

そのため、お時間頂きお話お伺いした中、申し訳ないながらもほぼ辞退(一部選考落ち)させて頂きました。

ITだけで完結しない、特定ドメインの知識やリソースなどが必要とされるスタートアップ環境

転職活動をしている中で毎回「もう一度起業は考えていないのか?」という質問を頂きました。もちろんそれは考えはしましたし、VCやメンターの方にも相談はしたものの、「今は出来ない」と考え選択肢から外しました。

なぜ出来ないと判断したかというと、「スマホで完結」「IT(Web)だけで完結」するビジネス領域が残っていないからです。

伸びているスタートアップ企業・事業は殆ど、特定ドメイン、例えば建築、決済、医療、製薬、物流、何らかに専門性を持っていました。そしてこれらの企業の成り立ちやCEOの経歴には必ずこれらへの知見・経験・リソースがありました。

「スマホアプリやWebサービスをたくさん作ってきたエンジニア兼事業家」の私はこれらを持ち合わせていません。Sider社は「コードレビューの自動化」というエンジニアの経験がなければ展開できない事業でしたが、2022年にエンジニアの経験を活かした事業というのは思いつきません。思いついたとしてもすぐMicrosoftにやられるでしょう。 waffle.io やCircleCIのように、いつ後ろから撃たれるか分かりません。

waffle.ioはGitHub Issuesをカンバン型に表示出来るサービスでした。GitHub Marketplaceに展開するベンダーであり、GitHub Universeでもスポンサーを何度も行ったGitHubの優良パートナーだったと思いますが、GitHub本体に同様の機能が実装されると、たちまち立ちゆかなくなり閉鎖されました。CircleCIは現存していますし多くの会社が使っていますが、GitHub Actionsの登場により、当初の予定通りの成長は出来ていないでしょう。

スタートアップ企業には特定ドメインに関する深い知識や、すぐ顧客になってくれる先が見つけられるつながり、ロビー活動ができるようなつながりなどが必要です。

これらを持っている企業は大変強く、魅力的である。自分自身には出来ないことであると感じました。

これらの企業は概ね選考落ちしたような気がします。理由も概ね明白で、「エンジニア出身のPdMとしては使えるがそれ以外にどう使っていいか分からない」という印象を私が与えたことに起因するでしょう。そのほか、家を建てたばかりで給与を下げないという前提があり、その前提ではスタートアップ企業の給与レンジと合わなかった事もあるでしょう。「優秀なPdMはいくらいてもいいから安ければ採用したいが…」といった感じです。

さておき、自分自身が今起業できない理由などを学ぶことが出来ました。

大きくなってからや上場してからも会社外(内からも)から見えない課題を持つ企業の多さ

これは多くは語りませんが、CTOが不在で困っている、CTOやCOOが離職予定、みたいな話をいくつか頂きました。ただポジションの高さ故に強いカルチャーマッチが求められ、これが難しく、これらの企業に行くことはありませんでした。

2023年2月に㈱インダストリー・ワンに入社

40社の中から最終的に選んだのは「上場企業の新規事業特化子会社」にカテゴライズされるかもしれない企業、特定顧客(JTC)への依存度の高いスタートアップ企業が依存する先であるJTC企業の関連会社であるインダストリー・ワン社です。

三菱商事の100%子会社であり、コンサルティング事業部、エンジニアリング事業部、デザイン事業部の3事業部が存在する「産業DX推進」を謳う会社です。

私は経歴上、楽天(正社員)、サイバーエージェント(業務委託)、デジタルアドバタイジングコンソーシアム(業務委託)など、大きい企業自体は関わった経験はありました。一方で、日本の伝統的な大企業の中で働いたことはありませんでした。

楽天は確かに巨大な企業ですが、時価総額2兆円、創業2004年です。三菱商事は時価総額11兆円、創業1950年。時価総額が5倍以上、創業が50年以上の差があります。起源を辿れば1871年(明治4年)九十九商会まで遡ります。歴史が違うのです。日本での商用インターネット始動は1993年です。三菱商事内にはテレックス(1956年〜)を使ってビジネスをバリバリやっていた方々も沢山おられます。インターネットの普及の遙か前から、通信を用いたビジネスを行っているのです。

インダストリー・ワンは三菱商事のデジタル戦略特化子会社です。同じカテゴリにMC Digital株式会社という、AIや機械学習などよりソフトウェア開発に特化した会社もありますが、「産業DX」を掲げるインダストリー・ワン社の方に入社を決めました。

産業DX

産業DXとは…の正確なところはコーポレートサイトを見ていただいた方が確かだと思いますが、自分の中では、「あらゆる産業にリーチ出来る商流を持っている」という企業としての特性が三菱商事及びその子会社である同社にはあり、それ故に「あらゆる産業のDXに関わることが出来るポジションにある」こと、また、それを実施しようとしていることなどが非常に魅力的に思いました(思っています)。

コーポレートサイト実績ページを見て頂くと分かるように「モビリティ」「流通」「製造」「化学」「エネルギー」「金属資源」「アパレル」様々な領域に関わっています。

これは「特定ドメインの知識やリソースなどが必要とされるスタートアップ環境」や「特定顧客(JTC)への依存度の高いスタートアップ企業」では出来ないことです。

特定顧客への依存度の高いスタートアップ企業は、サービスを作った後に、JTCに頑張って売りに行き、受注確度が高いJTCに対してサービスを最適化し受注につなげます。一方、商流をすでに全方位展開で持っている企業は、サービスを作る前に別のJTCにコンタクトを取り、確度を確かめ、事業展開することが可能です。

例えるなら、スタートアップ企業は河を河下から登っていきますが、河上から降りていく事が出来るようなものです。

少々誇張表現かもしれませんが、スタートアップ企業が実現しようとしていることを、最短経路で実行できる可能性があるのが産業DX企業であると考えました。

これが私がインダストリー・ワン社に入社を決めた理由です。

エンジニア職、コンサルタント職が募集されていますので、興味がある方がもしいらっしゃったら私までお声がけいただくか、コーポレートサイト求人ページからご応募ください。

実際に関わったプロジェクトの事業領域

ヘルスケア領域、都市開発領域、モビリティ、エネルギー関連、物流(海)など、様々な領域に深かったり浅かったりで関与させていただきました。

金属加工の書籍を読んだり、蓄電池(鉛・リチウムイオン等)の特性について学んだり、そういった機会はスタートアップ企業に属したりなどの他の選択肢では得られなかったものだったと思います。

会社内での経歴や肩書き

入社当時は「Product Service事業部 マネージャー」という肩書きでしたが、組織改編に伴い「インキュベーション事業部 マネージャー」、「コンサルティング事業部 マネージャー」に肩書きが変わっています。
そういうわけで、現職で何をやっているかと聞かれると、いつのまにか「コンサルタント」になっていました。コンサルタントの経験はなかったのですが、起業経験・PO経験があれば何とかなるといいますか、概ねのことは経験済みで、引き出しがあるもので、コンサルタントとして支援できる事というのは多くありました。また、エンジニアとしての経歴もコンサルタントとしての差別化には役立ちました。
コードレビューが出来るコンサルはなかなかいませんし、インフラ構成のレビューを出来るコンサルもなかなかいません。データセンター内の物理ネットワークの設計のレビューが出来るコンサルタントもなかなかいませんので…それってコンサル…?と言われると難しいところですが、コンサルティングファーム出身の同僚たちが「それもコンサル」と言ってくれるので、私はその領域を得意としているコンサルなんだと思います笑。

余談ですがテニス始めました

全然キャリアには関係ないのですが、インダストリー・ワン社には部活制度があり、部活動を会社が支援しています。テニス部、映画部、美術部、そのほか様々な部活があります。

会社内にテニスコートがあるわけではありませんが、都営や私営のテニスコートを借りて同僚で集まってテニスをするテニス部があり、入社及び入部をきっかけにテニススクールに通い始めました。これは今まで全くスポーツをしなかった、ヨガやピラティスをしても続かなかった、私にとって大きな変化です。

今では息子2人(小4、小1)と私の3人がテニスを習っている、たまにテニスコートを借りて家族でテニスしています。インダストリー・ワン社のテニス部がこの起点であり、すごく感謝しています。

部活動があるだけではなく、フレックスタイムが長い(コアタイムが短い)、リモートワークOK(軽井沢在住の方も)、休日(有休付与)が多い、1日の就業時間が8時間ではなく7.5時間、特茶やコーヒー飲み放題、オフィスが東京(京橋)という一等地など、スタートアップ企業にずっと居た身としては至れり尽くせりな会社でした。スタートアップ企業のオフィスって坪単価安いせいかトイレとかボロかったりしますが、ピッカピカです。
特茶だけでなく健康的なスムージー、野菜ジュース、様々あります。コーヒーもマシンでその場でひく物で、コーヒー豆も三菱商事グループのものなど、複数選べます。至れり尽くせりです。

オフィスのバーチャル見学が出来ますので興味があればどうぞ!
オフィス案内人の川越さんもテニス部所属です。

2025

2024年中はインダストリー・ワン社に在籍しているのですが、実は(タイトルから分かるとおり)2025年からは別の会社に籍を移す事にしました。

その企業については別の記事で書こうと思いますのでまた読んでくださるとうれしいです。肩書き・役割は未定です。CSかもしれません。(CEO→PdM→コンサル→CS…?)

別の会社に移る事にした理由はシンプルに2つです。

①その会社の友人から強く望まれたから。代表は友人(関わり自体は薄かったですが)であり、社外取締役は自分の10年来のメンターでもあります。そして、産業DXとまではいかないのですが、変わらずJTCへの関与度が広く深いです。
②東京証券取引所の鐘を叩きたい。会社の上場を達成出来る、もしくは達成時のバリューションに大きく寄与したい。これは三菱商事100%子会社では実現出来ない為。自身が起業したとき、Repro社に転職したとき、両方でずっと持ち続けていた目標の一つであり、可能であれば30代で実現したい目標です。あと36ヶ月はあるので実現不可能な目標ではないはずです。

上記の転職の対価に、特茶飲み放題も、沢山の有休も、東京駅勤務というブランドも失い、8時間労働に戻りますが…笑

自分自身が大企業に所属すること自体に価値を見いだしている訳ではありませんが、なんだかんだ言っても、日本を回しているのは大企業・JTCであり、スタートアップ企業が単独で出来ることは小さいと考えています。

「自分はこんな小さな事をして世の中の役に立っているんだろうか」と悩む機会がある方は、ぜひ一声お声がけください。

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Koichiro, Sumi
Koichiro, Sumi

Written by Koichiro, Sumi

Founder of Sider. Sider is Automated Code Review Platform on GitHub. 取り留めもなく日々思ったことを綴ります。

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